加湿と除湿、空気質を大きく変える湿度の話|埼玉の家づくりを応援
2026.06.10(更新)
2026.06.10(更新)
加湿と除湿、空気質を大きく変える湿度の話
公開日: 最終更新日:

高断熱住宅が標準化しつつある昨今、「UA値」や「C値」といった断熱・気密性能の数値を気にする方が非常に増えてきました。
しかし、性能が良い家を建てたはずなのに「夏はなんだかジメジメして寝苦しい」「冬は喉がカラカラになって風邪をひきやすい」といった不満の声が後を絶ちません。
実は、快適さを決める本当の正体は「温度」以上に「湿度」にあることをご存知でしょうか?
今回は、高性能住宅だからこそ陥りやすい夏の湿気問題(サーモオフ)や、冬の過乾燥の物理的メカニズム、そしてそれらを解決する全熱交換換気の有効性について、専門的な視点で徹底解説していきます。
今回のコラムは、これから高性能な家づくりを検討されている方に、数値だけでは見えない「空気質」の真実をお伝えする内容になっています。
それでは、今回のコラムの要点からみていきましょう。
・人の体感温度は「湿度」によって大きく左右され、同じ25℃でも湿度が10%違えば体感は2℃以上変わる
・最近の高断熱住宅では、エアコンがすぐに設定温度に達して停止してしまうため、除湿が行われず「低温多湿」の不快な環境になりやすい
・冬の外気には物理的に水分がほとんど含まれていないため、換気をする限り加湿器なしで湿度40〜50%まで上げることは不可能
・調湿建材や無垢材はあくまで補助的な役割であり、水分を生み出す加湿装置や除湿器ではないため、根本的な解決策にはなり得ない
・「全熱交換型」の換気システムを採用することで、換気による湿度のロス(捨ててしまう湿気)を防ぎ、冷暖房効率と快適性を劇的に向上できる

家づくりにおいて「断熱性能(UA値)」は、車の燃費のようなもので、確かに重要な指標です。
しかし、日本のような高温多湿な地域において、この数値だけを追いかけることは非常に危険です 。
なぜなら、人間の「快・不快」の感覚は、温度計の数字だけでは決まらないからです。
例えば、真夏の30℃の日でも、湿度が低いカラッとした日であれば、日陰に入れば涼しく感じます。
一方で、梅雨時の25℃は、気温自体はそこまで高くないのに、まとわりつくような不快さを感じた経験は誰しもあるでしょう。
これは、人間が常に発熱しており、汗をかいてその水分が蒸発する時の「気化熱」で体温調整をしているからです。
湿度が高いと汗が蒸発せず、体温が下がりにくくなるため、実際の温度以上に暑く不快に感じます。
逆に冬場は、湿度が低いと皮膚から水分が奪われやすく、気化熱で体温が奪われるため、実際の室温よりも寒く感じてしまいます。
つまり、高断熱住宅であっても、この「湿度コントロール」ができていなければ、それは単なる「保温性の高い箱」に過ぎず、住み心地の良い家とは言えないのです 。
「高断熱な家なら、少しのエアコンで涼しくなるはず」
多くの方がそう思い、実際に最新の高断熱住宅ではエアコン一台で家中を冷やすことが可能になっています。
しかし、ここで皮肉な現象が起きます。それが「サーモオフ」問題です。

昔の家(低断熱な家)は、外からの熱がどんどん入ってくるため、エアコンは常にフル稼働して部屋を冷やし続ける必要がありました。
エアコンは空気を冷やす熱交換器が結露することで「除湿」を行いますが、フル稼働している間はずっと除湿が行われるため、結果的に湿度は下がっていました。
しかし、最新の高断熱住宅は「魔法瓶」のように熱を逃しません。
一度部屋が冷えてしまうと、その冷たさを維持できるため、エアコンは「設定温度になった」と判断して、運転を弱めるか停止(送風のみ)してしまいます。これがサーモオフです。
エアコンが冷房運転を止めると、当然ながら除湿機能もストップします。
しかし、人間が生活している以上、呼吸や調理、入浴などで室内の湿気は発生し続けます。
その結果、室温は25℃で涼しいはずなのに、湿度は70%〜80%という「低温多湿」の状態、いわゆる「洞窟の中のようなジメジメした寒さ」が生まれてしまうのです。

この問題を解決するためには、温度を下げることと、湿度を下げることを切り離して考える必要があります。
一般的なエアコンの「ドライ(弱冷房除湿)」機能は、温度を下げながら除湿するため、サーモオフ問題の解決にはなりにくいです。
有効なのは「再熱除湿」機能を搭載したエアコンを選ぶことです。
これは、一度冷やして除湿した空気を、再び温めてから部屋に戻す機能で、室温を下げ過ぎずに除湿を続けることができます。
また、あえて「大きすぎない(畳数に見合った、あるいは少し小さめの)エアコン」を選び、エアコンを休ませずに働かせ続けるという設計手法も、高断熱住宅では有効なテクニックの一つです。
次に、冬場の過乾燥問題についてです。
埼玉の冬でも雨(もしくは雪)が降り、外は湿気があっても、室内に入ると驚くほど乾燥します 。
「外は湿度80%もあるのに、なぜ室内は30%になるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。

これには「飽和水蒸気量」という物理法則が関係しています。
空気は、温度が高いほど多くの水分を含むことができ、温度が低いと少しの水分しか含むことができません。
冬の外気(例えば0℃)は、たとえ湿度(相対湿度)が80%であっても、空気中に含まれている水分の量(絶対湿度)は極めて少ないのです。
具体的に言うと、0℃で湿度80%の空気に含まれる水分量は、1立方メートルあたり約3.8gしかありません。
この「カラカラに乾いた外気」を換気システムで室内に取り込み、暖房で20℃まで温めたとします。
20℃の空気が含むことができる水分量の上限(飽和水蒸気量)は約17.3gです。
水分量(3.8g)はそのままで、器の大きさ(17.3g)だけが大きくなるため、計算上の湿度は約20%程度まで一気に低下します。
これが、冬場に室内が異常に乾燥する物理的なメカニズムです。

よく「無垢材や漆喰、珪藻土を使えば、調湿効果で乾燥しませんか?」という質問をもらうことがあります。
確かにこれらの自然素材には、湿気を吸ったり吐いたりする素晴らしい効果があります。
しかし、あくまで「今ある湿気」を一時的に蓄えたり放出したりするバッファ(緩衝材)としての役割であり、加湿器のように水分をゼロから生み出すわけではありません。
24時間換気によって、常に乾燥した外気が毎時ごっそりと入れ替わっている環境下では、建材の調湿能力だけでは、人間が快適と感じる湿度(40〜60%)を維持するための水分供給量は圧倒的に足りません。
冬の高断熱住宅で湿度を保つためには、物理的に「水を蒸発させる(加湿する)」以外に方法はないのです。
では、こうした夏冬の過酷な湿度環境に対して、設備面でどのような対策ができるでしょうか。
最も合理的かつ効果的なのが「全熱交換型」の第1種換気システムの採用です。
換気システムには大きく分けて「顕熱(けんねつ)交換型」と「全熱(ぜんねつ)交換型」の2種類があります。
・顕熱交換型:温度だけを交換する換気システム。湿気(水分)は交換せずそのまま素通りさせる。冬は乾燥した外気がそのまま入り、夏は湿気がそのまま入る。
※主に寒冷地仕様の商品に採用されることが多い
・全熱交換型:温度だけでなく「湿度」も交換する換気システム。排気する汚れた空気から熱と湿気を回収し、新しく入ってくる空気に移して室内に戻す。
※主に一般地の主力の熱交換型換気扇に採用

出典:パナソニック:換気と省エネの両立には全熱交換器を導入しよう
全熱交換型を採用すると、以下のような劇的なメリットが生まれます。
・冬場の場合
生活(料理や入浴、加湿器)で発生した貴重な湿気を、換気で外に捨てる際に回収し、入ってくる乾燥した外気に移して室内に戻します。
これにより、加湿器の負担を大幅に減らしながら、過乾燥を防ぐことができます。
・夏場の場合
外のジメジメした高温多湿な空気をそのまま入れるのではなく、室内の涼しく乾いた空気を利用して、入ってくる空気の湿気を除去してから取り込みます。
これにより、エアコンの除湿負荷(潜熱負荷)が減り、より少ないエネルギーでサラッとした空間を作ることができます。
夏は高温多湿、冬は過乾燥になりやすい地域において、ただ空気を入れ替えるだけの換気扇を使うことは、せっかく整えた室内の快適さをドブに捨てているようなものです 。
「湿度」までコントロールできる全熱交換換気は、高断熱住宅のポテンシャルを最大限に引き出すための必須アイテムと言えるでしょう。
「高断熱住宅だから快適」というのは、半分正解で半分間違いです。
本当の意味で心地よい家をつくるためには、断熱性能(UA値)という「保温性能」だけでなく、その地域特有の気候を読み解き、「湿度」まで緻密に計算・コントロールする設計が必要です 。
これから家づくりをされる方は、ぜひ「断熱」だけでなく「換気と空調計画」についても、住宅会社に詳しく聞いてみてください。
温度・湿度・換気のバランスが取れた、本当に快適な住まいについて、イエタッタ埼玉を活用してハウスメーカー・住宅会社探しをしてみてください。
▼執筆▼
住宅専門コンサルタント
大手ハウスメーカー/大手住宅設備機器メーカーでの経歴を持つ
保有資格:宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー2級