ZEHと全館空調は相性がわるい?省エネ性への影響とは|埼玉の家づくりを応援

2026.06.10(更新)

ZEHと全館空調は相性がわるい?省エネ性への影響とは

公開日: 最終更新日:

今回は、全館空調の省エネ性と、ZEHを含む高性能住宅との相性をみていきます。
特に埼玉県を中心とするエリアでの気候条件などをふまえて、省エネ性での評価などを少し専門的な視点で紹介します。
全館空調は、果たしてエコなのか?
高性能住宅との相性はどうなのか?
こんな疑問にお答えしていく内容となっています。
それでは、今回のコラムの要点から見ていきましょう。

・高断熱住宅と全館空調は相性がいいものの、換気を含めて全体の空調設計がしっかりされていないと、温度以外の問題も起きる

・公的な申請などにも使われる「エネルギー消費性能計算プログラム・住宅版」での計算では、全館空調と個別空調では全館空調の方が消費エネルギーは大きくなる

・断熱性が高いと、空調にかかるエネルギーも少なくなるものの、全館の容積に対して24時間空調を運転し続けると電気代も当然高くなる

・個別空調での全館カバーは現実的には難しく、全館空調の真の優位性として、間取りの自由度を確保しながら、快適性を均一に確保できる点にある

 

1. 全館空調は高性能住宅と相性がいい!でも…

まず答えからお伝えすると、全館空調と高性能住宅(一定以上の断熱性・気密性が確保された住宅)は相性がいいです。
断熱性などが優れていると、保温性が高く消費するエネルギーは少なく済みます。
しかし、単純に断熱性だけを上げればいいわけではなく、様々な設計で注意すべきポイントがあります。
まずは、この設計上の注意点を解説していきましょう。

 

1-1. 換気は熱交換・第一種換気システムを併用することが前提

それでは、高性能住宅ならではの設計上の注意点、1つ目は換気です。
空調と関係ないように思えて、大きな影響を及ぼす換気設計ですが、全館空調を含めて基本は全熱交換型の第一種換気システムを併用することがおすすめです。
換気は新鮮な外気を取り込んだり、室内の空気を排出させて空気を循環させる、家にとって大事な機能です。
ただ、換気の過程の中で空気と共に外気が持つ「温度」と「湿度」を取り込んできます。
この温度・湿度の影響を最小限にするためには、今の一般的な技術では全熱交換型の第一種換気システムしか方法がありません。
空調への負荷を減らすと共に、温度・湿度のコントロールをしやすくするためには、換気設計も工務店としっかり相談しながらすすめましょう。

 

1-2. ダクト設計で天井や基礎設計に影響あり

上記の熱交換型の第一種換気システムは、ダクトで空気を各部屋に搬送するタイプが、高性能住宅では主流です。
壁掛け式など簡易的なタイプもありますが、廊下や非居室空間の換気も考えるとダクト式の方が循環風量もたくさんあり、全館をカバーするには適しています。
このダクト式を採用する際、ダクトをどこに持っていくのか?吹き出し口の位置など、意外と難しいのです。
全館空調や、ダクト式の換気システムの施工に慣れている会社であれば問題が発生することは少ないですが、建築では計算上と実態の施工上の乖離が起きることもしばしばあります。
既定の風量が出ているか?など、ダクトの引き回し状況で大きく変わってくるため、このあたりも注意が必要です。

 

1-3. 気密性が高いことも重要

新築業界では、断熱性に関しては市場全体が高断熱仕様が当たり前になってきています。
しかし、気密性に関しては公的な基準がないこともあり、まだまだ気密性に配慮している会社は多くないのが現実です。
気密性の良し悪しは、空調の効きを計算通りにできるかどうか?だけでなく、住宅の“持ち”にも影響してきます。
特に全館空調をする場合、どこかに「断熱欠損」「気密欠損」があると、内外での熱の差が出やすく結露などにつながるリスクがあります。
そのため、全館空調をする場合には、断熱だけでなく気密にも配慮した設計が大事です。
全館空調を導入する場合、目安とするC値は0.5前後以下がよいでしょう。

 

2. 全館空調は冷暖房のエネルギーが増大

つづいて、個別空調(各部屋をエアコンなどで空調するタイプ)と全館空調、どちらが電気代が高いの?と考える方もいるのではないでしょうか。
これも、結論から申し上げると「全館空調の方がエネルギーが増大する可能性が高い」です。
もちろん、使い方などによっても大きく変動するため、あくまで参考値ではありますが、おおよそ筆者の経験からも間欠運転の個別空調より全館空調の方が電気代は高くなる感覚です。

 

2-1. 公的な省エネ計算をしても全館空調方がエネルギーが大きくなる

公的な申請などにも使われる「エネルギー消費性能計算プログラム・住宅版」での計算では、全館空調と個別空調では全館空調の方が消費エネルギーは大きくなります
下記のような埼玉県での新築を想定した条件で、空調以外の条件を固定にして計算していますが、おおよそ個別空調の方が「計算上は」消費するエネルギーが少なくなります。

 

◆全館空調の場合の年間エネルギー
89,762MJ(設計一次エネルギー量)※削減率:29%(BEI:0.71)

◆個別空調の場合の年間エネルギー
63,185MJ(設計一次エネルギー量)※削減率:25%(BEI:0.75)

※条件概要
全館空調の場合:住戸全体を冷暖房、断熱区画内、VAVなし、全般換気なし(規定値)
個別空調の場合:居室のみを冷暖房、エアコン想定(規定値)

以下、固定条件
・面積等は国交省のモデルプランのまま
・6地域で通風などの計算は無
・換気は量計算とも分離で計算、ダクト式第一種換気(径の太いダクト・DC想定)
・熱交換あり(70%)
・給湯はエコキュート(JIS 3.3)
・照明はLED想定
・太陽光発電なし

 

細かい話はさておき、全館空調の場合は元々、エネルギーが多く消費される前提になっており、暖房・冷房ともに基準となるエネルギー量(分母)も増大します。
そのため、基準からの削減率では4%しか違いがありませんが、そもそもの設計一次エネルギー量(分子となる、その家の年間エネルギー消費量)が、全館空調が約90,000MJ、個別空調が63,000MJとなっています。
その他の条件は変えていないことから、個別空調の方がエネルギー消費量は計算上、少なく済んでいるわけです。
断熱性が高いと空調にかかるエネルギー自体は確かに少なくなるものの、全館の容積に対して24時間空調を運転し続けると、消費エネルギーも高くなる可能性が高いです。
「エアコンは消したり付けたりを繰り返すと電気代が高くなる」と思われていますが、1~2時間程度の外出で入/切を繰り返すのであれば当てはまるものの、昼間不在時はずっと消しているといったケースであれば、そちらの方が電気代は安く済みます。
高断熱住宅ではエアコンの効きも早いので、帰宅前に遠隔操作でエアコンを付けたり、タイマー設定しておけば、24時間全館回し続けなくてもよいとも言えます。

 

3. 全館空調は間取りへの影響を最小化

建物全体の断熱・気密性能が高い住宅においては、実際には14畳〜20畳用程度の壁掛けエアコン1台でも、理論的には家全体の負荷を賄えるケースが少なくありません。
しかし、全館の空調を壁掛けエアコン1〜2台に集約してカバーするのは困難です。
各部屋に建具や仕切りがある以上、空気の流動は制約され、温度分布にムラが生じてしまいます。
個別エアコンで住宅全体をカバーしようとする場合、現実的には間取りの制約が大きくなるか、ファンとダクトで空気を搬送する形になります。
例えば、そういったファンやダクトなしでエアコンの冷暖気を各部屋まで行き渡らせるためには、建具を設けないか開放的な間取りにせざるを得ず、プライバシーとの両立が難しくなります。
また個室・水まわりなど、用途によって独立性が求められる空間では、建具を省く設計は現実的ではありません。
さらにエアコンから出た空気をそのまま搬送するのであれば、温度も安定しやすいですが、廊下などの空気を搬送する場合、風量でカバーすることになると各部屋にかなりの量の空気を押し込むことになり、音や圧といった別の問題が発生する可能性も秘めています。
これに対して全館空調は、ダクトを介して温調済みの空気を各部屋へ直接搬送できる点が大きな強みとなります。
ダクト方式を採用することで、建具の有無や窓の配置による影響を受けにくく、居室ごとに安定した温熱環境を確保しやすいことが特徴となります。
すなわち、間取りの自由度を確保しながら、快適性を均一に担保しやすいのです。
これこそが、個別空調と比較した際の全館空調の真の優位性といえます。

 

4. まとめ

今回は、全館空調を少し専門的な視点で考察してきました。
昔は断熱性能などが低かったこともあり、全館空調で快適に暮らすことが一種のステータスのようになっていました。
しかし、今の高断熱住宅であれば冷暖房の効きもよいため、本当に全館空調が必要かどうか?は電気代といった現実的な側面と、全館空調/個別空調で実現できる温度差、さらには皆さんが希望される間取りでの自由度など様々な視点で考えていくとよいでしょう。
イエタッタ埼玉では、全館空調やパッシブデザインなどを扱う会社など、様々な会社を紹介しています。
ぜひ、イエタッタ埼玉を活用してお気に入りの会社を見つけてください。

 

▼執筆▼ 

家辞書/別所義浩

住宅専門コンサルタント
大手ハウスメーカー/大手住宅設備機器メーカーでの経歴を持つ
保有資格:宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー2級

 

モデルハウス・常設展示場の一覧ボタン

工務店・ハウスメーカーの一覧はこちらから

カテゴリー一覧